ふたつと 同じ
名前はない、空よ。
同じ顔や同じ模様や、色がなく。
今さっき ここを去った君のことは、
いつかまた 思い出すことは 出来ないだろう、でも
ひとつだけの君と あの日出会えたことを
わたしはずっと忘れないでしょう。
こんなに美しく 気高く けわしく
わたしの心を 切り経っていく 君に
言葉をかけることが出来ないでいるよ。
あんなに素晴らしい景色と君を、
一緒に失くしてしまったと 泣いていたけど。
いつか まっさらな 君は、
わたしの思い出や 記憶の片隅 つっついて、
みつからないのを 確認してから、そっと
息を呑み まぶしそうに傾いて
乾いたわたしの ひたいの上に、
たった一度の、再会を
声に出して、降り注いでくれるんだね。