いつもの 5時は
  どこかの 仕事上がりの チャイム

  私の 新しい 旅支度を 始める
  使い古しの 鍋の音 
  ゴトゴト ゴトゴト   鳴らしながら

  あなたが 出先で 訪れて
  二人は すっと すれ違う
  門が ふたりを 隔てて立ち
  そこは きっと
  どこか知らない 大地の果て?


       下向き笑い
       キライでいたらよかった
       夕暮れ顔を 地面に落とし
       賑やかな雑踏 まぎらかして 消えてった


     肘鉄 食らわせ ドア蹴って
     とうとう 部屋から 出たゴミが
     目新しいので おかしくて
     慣れないヒールの 
     踵を 叩きながら

     最後に 真似して 笑ってみた

     あなたが 同じ スーツ着て

        あなたが いつか 訪れて
        私を 町中 耳余る
        唄の向こうに みつけても

        それは どこか 別の 
        君 繕うはずの 色の隙間


        もしも あなたが つきとめて

        伸ばした爪先 弦 弾く

        空しく くうに 響くのよ

        それは きっと

        わたしのじゃない 誰の声


    あなたが 気づいて 指先で

    触れたら きっと

    わたしじゃない 別のわたし


         今は 知らない

       わたしも 知らない

    見たこともない わたし

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