だんだん かすんで いくのかな   

いまも あの小径を ぶらぶら歩いてるわたしを   
かげろう浮かべ 行く手の 道の あの人が   

手のひらを ひらひらと   
あいさつ 済ませた 記憶の外縁で   
思い出    
入り口    
拒むな と   
旗が 交通整理 してるよう   


あなたを みつけた 誇りをかけて   

線路に 降りて 思いっきり   
ブレーキで  足を 停めた   

本音は しくじり 痛かった   
走って 倒れて また 走り   
とても とても 痛かった   


   かの人の その名前を   
   書いて 決めるのが 怖かった   


       虹の前の 雨の前の   
       かすかな 遠い 霧の中に   
       ときおり 咲くと いう草の   
       花びら じっと ながめていた   


       情熱与れる 蜜を 食む   
       夏虫たちが よじ登るのを   
       伸び悩んだ ふりで じっと   
       うなだれていたね ずっと   


          伸び悩んだ ふりが うまく   

   駅の名前を   

   確かめるのが 嫌だった   

          また 戻りたいのかな   

          ベクトル 一方通行の 発車ホーム   
          錆び付いた ギアは    
          乾かぬまま 磨けない   
             息を 吹きかけてみたりして   
             窓も けむって みがけない   
             濡れたまま 雨を待つことなく   
             窓が くもって よく見えない    

       曲がり角に ちょうどある   
       ポストになら 着けるだろう   
   その先の   

   そして   
      この手紙は 約束とおり   
        右下の 折り目から   
       燃やして 捨ててしまってね   

       燃やして 捨ててしまってね