小川色をしたささやきが
襟足に細く丸い虹を渡す

俯いていた未来の先には
淡い恋の夢が残り少なくなる

千切るのには可哀想だと
その花は見ているだけだった

たどる道すがら保っていた平衡が
わずかに傾き出し語り掛けて来る

放った反抗の行く手には
繭に囲った夢が揺さぶりかかる

折るのには儚いものだと
その花を見ているだけだった

消えかかる虹に息を吹きかけ
わたしは顔を澄んだ空に向けた

ゆきなに

まどかに

わたしは虹の両足の間に立ち止まった


吸い込まれることなく

恐ろしく惑うことなく

その花はいつまでも咲くのだと言った

いつまでも咲いているのなら



ゆきなに

まどかに

わたしはそれに両手を差し向けた


つぶさぬよう

抱きしめようか

壊れるものか

抱きしめようか

わたしひとりのものではなく

わたしだけのものにして


連れ添った記憶の棘が

指に刺さる青い薔薇

新しい夢の花


雨が上がったのは過去

今はあの過去ではない

新しい夢の花


痛みをともなっても

わたしひとりのものではなく

わたしだけのものにする

たったひとつの夢の花

新しい過去の花











 by   metoeruri  2012 / 10/ 23 /