確か

この哀しみの塊りを撫でおろす

あなたの手が見え隠れしています

幻を束ねて出来上がらなかった橋の輪が

靄のかかった朝露を虹に描いていきます

強固な岩に叩いてもなお削られず

あなたの涙さえ浮かび始めたところ


踵を返し跳ねた水溜まりに転げて笑い

映り込んだ編み目を緩むには眩しく

穴を重ねて見損なっていく針の端はもう

尖りうねった夕闇を平線に染めていきます


確か

ここに流れていた暖かい河が

あなたの懐に広がって吸われていきます

柱を折って出来上がらなかった屋根に落ちる

階音を鳴らす夏雨を雪に代えていきます



海よ

愛情を創った


いつか

逝く哀しみの塊りを連れ添っていこうとする

あなたの手をふり解けずにいます

頑固な意志に砕かれてもなおこの塊りを

揺さぶり柔らに潰されないのを見守られて


確か

確かに

触れて

欲しかったものまでを


立つ波と波との間に尋ねる

奪い奪われるのは


海よ












 by   metoeruri  2012 / 07/ 28 /