次第に好感を高めて近づいて来るあの人
見えない吐息に色と輪郭と匂いをまぶし
降りかかる雪に音と乗せるペンを持つ

かさばった欲望の重みに耐え抜いて
思い出の横顔に黒髪をたゆたわせる

火照り暖まった布団を羽織るのを止め
まさぐった冷えた二重の靴下を履いて起きる

感じていることを隠して来たことへの謝罪

衣擦れの感触や左肩で握り拳を作る癖や
階下の住人に迷惑をかけまいという神経が
足音を立てぬよう浮き歩き急いている癖や
遠慮に思慮を覆い被せて誤魔化している本心が

めくり返されてしまった後でも現実に促す夢と
幻なおさら真実味を帯びて傷んでいく生活感が

感じまいと禁じ封じ込めていた自分への贖罪

暴れ出しはしないかという気配を消す試行と
温もれはしないかという本能を負かす感情の

衝突


理由もわけもわからないまま動き出すまま
キャラメルを包むようにカラフルに着飾り
行く手を阻む敵同士を闘わせたまま放ったまま
皮を割られた胡桃のように完璧な姿として

認められたい

整理も届かず湧き立つ気持ち動く次第のまま
無視した信号を突っ切りT字路を左右に曲げ
無限の八の字を書き飛び躍る蝶になる気分で
天日の香りのする溌剌な月となり生まれ変わり

嬉しがりたい


天の川を渡す静かな唄ばかり流れていく

頼まれもしない星のまたたきに身を焦がす

ユーカリの毒をも降ろす消化器を孕んで

剣が盾につくような生業を扱き下ろす勢いで

揺らめきたい



泣き抱きたい

この世界を作った

君と二人

一人じゃない

感じている

止まない



涙で光る

つばさが濡れる













 by   metoeruri  2012 / 03/ 10 /