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第34話 なつかしの山へ (8月25日放送) この回では、 フランクフルトを発ったハイジが、おじいさんと再会するまでを、ゆっくりとじっくりと 描いています。 「お嬢さま、そんなに急がなくても大丈夫ですよ」付き添いのセバスチャンは何度こう言った でしょう。 汽車の席に落ち着いたハイジは、バスケットを膝の上に大事そうに抱き、 「わー、動いた、動いたわ」とはしゃぎます。 そして、走り去る景色を追いながら、フランクフルトに別れを告げます。 「さよなら、フランクフルト、さよなら、蝶々の森・・・」 「ねぇ、あとどのくらい?」ハイジは眠る間も取らず、訊ねます。 ようやく汽車を乗り継いで日付が変わると、うとうとし始めたハイジに、セバスチャンが 声をかけます、「お嬢さま、マイエンフェルトは、三つ目ですよ」 さぁ、目を覚ましたハイジの目に、山の眺めが待ち構えていました。 「山よ!山よ、山よ」ハイジの目頭はどんなに熱く燃えたことでしょう。 石や壁はどこにも見えず、山羊や牛の放牧、小道、赤い屋根、その向こうにどっしりと 裾野を広げたアルム。 マイエンフェルトの駅に降り立ったハイジは、本当に久しぶりに思い切り空気を吸い込み、 「山のにおいよ!」と踊ります。 マイエンフェルトからの坂道を駆け上っていると、ちょうどパン屋さんの荷馬車が通りかかりますね、 「そうだ、思い出したぞ、あんたはおんじんとこの、え〜っと」「ハイジよ!」 そう、パン屋さんはいつぞやパンとチーズの取引きで喧嘩をしたおんじのことを言及します。 「おじいさんは、とってもいい人よ、ねえ、おじさん」 デルフリ村の教会の屋根が見えてくると、袋荷物の上でまたハイジは喜んで踊ります。 「わー、村の泉、ちっとも変わってないわ」 「おじさん、そのカバン預かってくれない?」 喧嘩別れしたままのパン屋さんは困りますが、おんじと最も多く接して来た気のいいおじさんのことです から、快諾してトランクを預かってくれますね。 そそくさとセバスチャンに「わたし、ひとりで帰れるわ」と別れのときを急かします。 フランクフルトで最も身近に気のきいた世話をしてくれていたセバスチャンは、言います。 「お嬢さま、またいつでも戻って来てくださいよ」 そう、人に仕えて気の利く召使いの仕事のプロですから、そう言われると寂しいのだと 思いますが、手を振るハイジに「お元気で」と声をかけます。 ハイジははっきりと、そしてすがすがしい面持ちで言いきります。 「ありがとう、でも、山がいやになんて、決して、けっしてならないわ・・・」 このときのハイジのいでたちもなかなか可愛くて決まっています。 クリーム色の靴と同じ色の帽子に、裾に白いラインの入った紺のドレス。 10歳の少女のおめかしの恰好は、たった二日で終わりますね。 「蓋は開かなかったわ」大事なバスケットを腕に回し、ハイジはうさぎと追いかけっこ。 すると、そこにペーターの家が見えました。 「おば・・・」 いつものように、そう、いつもそうしていたように、 ハイジはドアを勢いよく開けると、息を飲んでしまいますが、 そこには、おばあさんの糸を紡ぐ音が静かにリズミカルに流れています。 ハイジがおばあさんの姿を、そーっとみつめます。 「ハイジもいつもそうやって飛び込んで来たものだが」 おばあさん、そのハイジがここに居るのです。 「おばあさん!わたしよ、ハイジよ!」 目の見えないおばあさんは声を聞いても信じられないので、 ハイジの身体を手に触れて確かめようとします。 いつもの木綿の服とは違うし、帽子も違うので、 ハイジは、おしゃれな帽子を取り、おばあさんは、ハイジの髪を撫でます。 「これは、ハイジの髪だ、本当にハイジなんだね」 「おばあさん!」「おお、神さま・・・」おばあさんは目を涙で濡らします。 「泣かないで、ちゃんと戻って来たんだから。もうよそへは行かないわ」 そうして、ハイジは、おみやげの白パンをおばあさんにそっと渡します。 「おばあさん、わかる?白パンよ」 遠く山を離れて暮らさなければならなかったこれまでのハイジの苦悩、ハイジの悲しみ、辛さ。 全て、こうして白パンをおばあさんに食べて欲しかったから、生まれた道のりだったのです。 おばあさんが白いやわらかなパンをちぎり、おいしそうにおいしそうに食べます。 それをハイジは真剣なまなざしで黙って見守っています。 真剣な顔、そして美しい顔、ハイジの瞳は、勲章をもらった以上に讃えても讃えきれない 偉大な功績に輝いているのですが、当の本人は、そんなことをちっとも考えていません。 「ハイジや、お前が毎日この山に居てくれることが、何よりも嬉しいんだよ」 驚くブリギッテに服も帽子も「もういらないの!」とあげてしまうと、 ハイジはお気に入りの帽子をちょこんと被り、靴も脱いで、 「わたし、この恰好で山に帰るわ!」 いよいよおじいさんの待つ山の上を目指します。 ハイジはただただ「おじいさーん!」と言います。 その声に喜びいさんで飛びつくヨーゼフ、ヨーゼフと転げ回るハイジを目にして、 信じられないで驚くおじいさん。 ・・・・・・・・・・・・ ハイジは、とうとう、夢に見たアルムの小屋の前で、暖かいおじいさんの懐に抱かれるのでした。 |
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ちょっとbreak-time
おんじが、山の崖を上り、
クララのために採って来た匂いのいい草(薬草=ハーブ)
「セキチクにタチジャコウソウか、
お前たちのいい香りがずっと下まで
漂って来たよ・・・」
せきちく:石竹
〜和名をカラナデシコ(唐撫子)といいます。
これに対して、あの大和撫子は、
別名をカワラナデシコ(河原撫子)といい、
秋の七草のひとつとして有名で、
いすれもナデシコ科です。
たちじゃこうそう:立ち麝香草
〜これは、一般的なシソ科に分類される
あの「タイム」のことです。
痛み止め、咳止め、駆風、虫下しなどの効能が
あるとされていますが,今ではソースなどの香料
として主に利用されていますね。
<参考、および引用:「植物園へようこそ!」>