失そうとしたとき
失望させたくはなかった

綺麗に幕を引きたかった

失せなかったとき
絶望に吊り下げられていた

海の音やのぼった灯台の想い出
土地の匂いを払い落せなかった

体重がじっとりと地面に沈んで
歩くことから始めてみたけれど

失そうと決めたとき
後に戻りたくはなかった

潔くあきらめ数えていたらよかった

失くそうとしたとき
手離したくないものができた

堂々と指を切りたかった

失くせなかったから
信じたくない出来事を受け入れた

草の嗅いと転げた丘の想い出
助手席の感触を拭い払おうとした

失くそうとしたとき
ずっと続いていくのだと知った

あなたのその言葉だけが
正しいのかと問いかけた

失くそうとしてみて

ずっと続いて来たことなのだと知った

あなたのその深遠な泉に膝をつき
薄まっていく涙の渦を見ている

どんどん薄まっていきそうな
涙の襞を見ている

あまりに正しいことなので
涙が嘘を写しこむ

覚えのあるひとつの真実

あまりに正しいことなので

失ったばかりのように
思い出す










 by   metoeruri  2012 / 06/ 25 /